2013/04/29

計り知れぬこと

母は無邪気に言う。
あの時、本当に良い子だなあ、と思ったのよ。

世の中の理不尽なことに過敏すぎた中学生のころ、
自分の感情に振り回されて気が滅入って疲れていた。
ある日、ついに何かの拍子にぽんっと栓が抜け、
学校で泣き始めてしまった。
自分でも何がどうなっているか分からないので、
どうしようもない。

ついに母が車で迎えに来ることになった。
迎えに来た母が見たのは、
学校の裏門で
手放しで泣いている娘。

おーんおーんって大声で泣いてたのよ
その時に、本当にこの子は良い子だなあ、と思ったのよ。

おりにふれて、母が語る、お気に入りのエピソード。

なんど聞いても、
娘には母のポイントが分からないでいる。



2013/04/28

目が悪いということ

生まれつき目の悪かった私が
レーシック手術を受けたのは7年前のこと。
焼けるような目の痛みに5日間苦しんだ後、
待っていたのはだらしのない日常だった。 

手術前の私の世界は、
コンタクトを装着している間だけが公式の世界。
コンタクト装着と共にに一日が公式に始まり、
コンタクトを外すと公式な一日が終わった。
コンタクトを外したぼんやりした世界は、
共有する人のいない、私だけの非公式な世界だ。
全ての輪郭がとけた色だけの世界。
同じ世界を見ている人はいない。

その世界を失って寂しかった。
目覚めると同時に、くっきりとした正しい世界がじゃじゃーん、
と私を待ち受けている。 


視力の衰えを感じる今、またあのぼんやりした私だけの世界が戻ってきた。
水の中から世界を透かして見る。
きっとまた面白い世界が戻ってくる。
それで良いのだと思う。