オリバーは迷っていた。
期間工の増えたその一帯は、今では終日渋滞が続き、オリバーは渋滞を避けるため、くねくねとした山道を走っている。助手席に置かれた葉書の差出人はエリナで「同窓会のお知らせ」とある。それがオリバーには不思議でならない。
オリバーやその町のほとんどの者たちのように、エリナもその町に二組の祖父母を持ち、その町で生まれ、育つ、その町の子だった。
ただ、ある日、厄介ごとを趣味のように背負い込むエリナの父親がまず消え、次いで、残っていた母親とエリナたち兄妹が、突然に、その町を去った。「転校」という言葉を知ってはいたが、まさかその町で出来事として生じるとは、学校中の誰もが想像していなかったに違いない。それは、二人が小学校五年生の時だ。
子供ながらに際立ってスタイルの良く、お金がかけられた美しい洋服を着たエリナは、いつも取り巻きの女子に囲まれ、飛抜けて目立っていた。オリバーは、小学校に上がる頃には、すでに経験として、そういった女子集団には関わらない方が良いことを学んでいたので、できるだけ、エリナたちとは距離を置くようにしており、それはとても上手くいっていた。彼女たちと子供らしくじゃれ合って、気持ちの高揚を得る代わりに、静かな、かき乱されることのない生活を、幼くして選んでいたのだった。
オリバーは、彼女たちが怖かったのではない。彼女たちと関わることによって、引き受けるべき役が回ってくることを、熱量の渦に巻き込まれ、自己が、瞬間とはいえ、消滅することを、恐れたのだった。
例えば、彼女たちが「普通」ではない何かをオリバーに見つけると(ほんの少し丈が短いズボンとか、ほんの少し変わった色の靴下とか)、瞬時に幕が開き「気の強い女の子たち」と「ちょっと抜けた男の子」が登場する舞台に立たせられてしまう。オリバーの友人たちが、どんなに上手にその道化役を演じることか(いったい人はいつどこで、暗黙の内に求められている役を理解し、演じる術を学ぶのだろう)!
そんな時のオリバーは、今や共演者となった友人と彼女たちが醸し出す、あのこそばゆい親密な空気の中で、どうにかそれを壊さないようにと、劇に背を向け、演じきった友人が誇らしげに戻ってくるのを、ただひたすら待つのだった。
エリナの突然の「転校」の報告(それは、後日教師からなされた)は、彼女にぴったりのドラマチックな展開で、オリバーは、エリナこそが「転校」すべき者だ、と思ったことを覚えている。数ヶ月は手紙を通じて、彼女の刺激ある都会での生活を共有していた女子たちからも、学年が変わる頃には、エリナの話は出なくなっていたはずだ。
だから、季節外れの同窓会の知らせにもおどろいたが、その発起人がエリナだということが、どうしてもオリバーには不思議だったのだ。